重ねた嘘、募る思い
「長田さん、今日こそは下のカフェで注文してみよう。電話するから」
昼休み、昨日電話注文を誘ってくれた先輩に声をかけられ嬉々としてカフェオレを依頼した。
なんだか昨日からカフェオレ不足だ。昼休みも飲めなかったし(栗大福はおいしかったけど)帰りも陽さんに邪魔されたし、夜もなんだかんだ言って早々に眠ってしまったから。
携帯をいじりながらぼーっとサイトを眺めていた。
クリスマスイブに行ったテーマパークの画像。ツリーの飾ってあった時の画像を探しているんだけど見つからない。まだ描き終えてなかったのに。
一度描き始めた絵は完成させたい。変なこだわりなのかもしれないけど、あんな中途半端じゃ終われない。あの日はわたしにとっていい日ではなかったけど、その記憶を昇華させるためにも。
「カフェオレ、お待たせしました」
とん、とデスクに置かれたいつものクリーム色の紙カップには黒のドリンキングリッドがついている。
これをつけたまま飲めるということを知らなかった時は『蓋なんていらないのに』とぶつぶつ文句を言いながら外して捨ててたっけ。それを思い出してつい笑いそうになってしまった。
「ありがとうござ――」
小銭入れを手にして顔をあげ、お礼を伝える最中にわたしは言葉を失った。
そこに立っていたのは見覚えのある茶髪で長めの前髪、その間から覗く細めの瞼。執事よろしく黒の蝶ネクタイにベスト姿の陽さんだったから。