重ねた嘘、募る思い
 
 そう思って自然と足早になるわたしのあとを陽さんがついてくるのがわかる。
 お願いついてこないでと心の中で何度も繰り返すけど陽さんには伝わらない。こんなに避けているのになんて察しの悪いひとなんだろうか!

「今日は時間ある? どこかで食事でもどうかな?」
「むっ……無理です」
「今日も用があるの?」
「はっ、いえっ、家に食事が用意してあるので」

 小走りでその場を去ろうとしたのを察知されたのか後ろからぐいんと右腕を引かれた。
 おっととと、と後ろに転びそうになり慌てて体勢を保つとぷっと笑い声がする。うぅ、そっちのせいなのに。

「話の途中で逃げようとするからそういう目に遭うんだよ。じゃ明日の土曜日は? 会社休みでしょ」

 うううう……やっぱり週休二日制なのバレてるのか。
 でもここで言い負かされてはダメなのだ。

「用事が……」
「お弁当持って絵を描きに行くの?」
「っ?」

 なぜばれたし! 
 昼休みにT-Bランドの画像を見て、明日描きに行こうと思っていた。
 配達に来た時にその画像を覗き見られたのかもしれない。でもそれだけじゃわからないはず。しかもなんでお弁当のことまで……って真麻しかいないじゃない。
 なんで従姉妹を売るような真似をするんだろうか。帰ってきたら吊るし上げてやるんだから!
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