重ねた嘘、募る思い

「えっ、今日は陽と?」
「……」
「ふーん、だからいつもよりお弁当に力入れてるんだ。唐揚げなんてあんまりやらないもんね」
「ちっ、違うわよっ」
「あーあー、いいのいいの。照れない照れない」
「真麻が余計なことを吹き込むからでしょ? わたしはひとりでゆっくり絵を描きたいのに、他の人が来るなんて迷惑なのよっ」

 揶揄る真麻のその態度にカチンと来て、声を荒らげてそう叫んでいた。
 リビングの方から「何事?」と心配そうに母が覗き込んでいる。
 だけど黙ったままのわたしと真麻を見て「けんかしないのよ」とすぐに戻って行ってしまった。
 揚げ鍋の中の油がパチパチと音を立てているのに気づいて、すぐに皿に上げると真麻の大きなため息が聞こえた。

「それさ、言う相手間違えてない? 迷惑なら直接陽にそう言えばいいじゃない。なんで私が文句言われるの?」
「え……」
「のんのことだから、どうせ何も言えなかったんだろうけどさ。だからって私に八つ当たりとか間違ってる」

 そう言い残した真麻がどんどんと大きな足音を立ててキッチンから出て行ってしまった。
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