重ねた嘘、募る思い
おにぎりは何個食べるかわからなかったから適当にたくさん作ってきた。
お互いの間におにぎりの入ったきんちゃくをどんと置くと、陽さんがうれしそうにそれを見ている。
「えっ、これ中身何っ?」
そっか、好き嫌いとかあるよね。全然そんなの考えなかった。
これだけ細身なんだもん。きっと偏食なんだろう。昨日羅列した希望のおかずだってまるっきり子ども向けのメニューだったし。甘やかされて育ったのかな。
「あっ、でも食べた時にうわーってのがいいから聞かないで食べる。いっただきます」
あれ、好き嫌いじゃないんだ。
陽さんが嬉々としてきんちゃくの中に手を入れ、すぐにひとつ取り出した。
そういえば目印も何もつけてないからどれがどの具だかわたしにも見分けがつかない。自分の好みで作ってきてしまったけど、もし嫌いなものがあったらどうしよう。残してもらえばいいか……。
「わ、なんだろ? これっ」
「えっと、カリカリ梅をきざんだのとおかか……」
ひと口かぶりついて向けられたその具の中身を教えると、子どもみたいにキラキラと輝いた目つきでそれを見ている。
そして再びかぶりついて大きくうなずいた。
「んまいねー! カリカリ梅のおにぎり初めてだ。ゴマも入ってる?」
「え、あ、はい」
「おいしいなあ。これ好きだわ」
ただのおにぎりですが……?
なんだかすごくオーバーな気がしないでもないけどとりあえず自分も食べよう。
そうそう、水筒の中の暖かいお茶を出すつもりだったのにおにぎりの具ですっかり忘れてたわ。