重ねた嘘、募る思い

「わー! お弁当カラフルっ」

 弁当箱を開いた陽さんが大声を上げたからビックリしてお茶をこぼしそうになった。
 カラフルって言われたものしか入れてないつもりなんだけど。
 唐揚げと厚焼き玉子、タコさんウィンナーにプチトマト。彩りにアスパラとベーコンをまいたものとほうれん草のチーズ焼きくらいで。
 時間がかかったのは唐揚げくらいで実質いつもの弁当とほとんど変わらない。こんなによろこばれると申し訳ないくらいだ。

「お茶、置いておきます」

 そう声をかけた時には満面の笑みで唐揚げをほおばっていた。
 ありきたりの弁当なのになんでこんなにうれしそうなんだろう。
 ひとつひとつ噛みしめておいしいおいしいと繰り返し、「これも食べていい?」とわざわざ確認を取りながらおにぎりの具を言い当て、あっという間にほぼ完食してしまっていた。
 気づけばわたしはおにぎりをひとつ食べたくらいでおかずにほとんど手をつけていなかった。そのくらい呆気に取られて陽さんの豪快な食べっぷりを見てしまっていた。

「ごめん、おにぎり一個しか残ってない……」
「……いいです」
「はあーすんげえうまかった! 満腹ー! 幸せー!」

 おなかをぽんぽんと叩いてお茶を啜る陽さん。
 この細い身体のどこにあれだけの食べ物が入ったのだろうか。不思議でならない。
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