重ねた嘘、募る思い
そこに描かれていたのは風景画じゃなくて、イラスト風にデフォルメされた人物画だった。
服装とか髪型でわかるくらいにしか似せられていないけど、間違いなくわたし。
どこかで見たことあるようなかわいらしいイラストは、笑顔のわたしと眉に皺を寄せているわたしの二枚。しかも色鉛筆まで使っている。
風景を見ながら描いているふうだったのに、わたしを見ていたってこと?
そう思ったら恥ずかしくて気がおかしくなりそうだった。
次のページをめくると、ふたりの人物画で。
それはどう見てもイブの日のわたしと真麻がうれしそうにハンバーガーをかじる姿。その絵には水彩色鉛筆が使われていた。きっと家で描いたものだろう。
わたしの頭の上に小さく文字が書いてあった。
『もう、うそはなしね』
真麻のことを好きな人に横恋慕なんてしたくない。しちゃいけないのに。
辛くなるのは自分だって痛いほどわかっているくせに、なんで同じことを繰り返してしまうのだろうか。
「こんなの、ずるいよ……」
スケッチブックを抱きしめながら、涙を堪えるのに必死だった。