重ねた嘘、募る思い

 その日の夜。
 どうにも陽さんのことが頭から離れず、眠れそうになかった。
 真麻に相談してみたい気持ちになったけど、うまく説明できる自信がない。
 こんな話を持ちかけたら絶対に『恋のせい』と言われるような気がして。
 その答えがほしいわけじゃない。違うと否定してほしいだけ。そんなこともわかっているから余計にどうしていいかわからない。

 だけどこんなふうにひとりで悶々としているのは精神的にもたない。
 こんな気持ちになったのはきっと生まれて初めてだと思う。
 いつもだったら少し辛いけどいつの間にか自分の中からその人の存在を消すことができていたはずなのに、そのやり方がわからなくなってしまっていた。
 
 わたしの部屋のカレンダーには真麻の勤務が記載してある。
 それによると今日は遅番で、二十一時までの勤務だった。そろそろ帰ってくる頃だろう。

 とにかくひとりでいたくなくて、パジャマの上に赤いはんてんを羽織って部屋を出た。
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