重ねた嘘、募る思い
翌日。
起きて部屋のカーテンを開けるとぼたん雪がちらついていた。初雪だ。
ツリーだったあの木に雪が降り積もるかもしれない。寒いだろうけど絵を描きに行きたい気持ちになる。
だけどこんな雪じゃ陽さんも行かないだろう。風邪を引くだけだ。
もしかしたら真麻を誘って他の場所に行っているかもしれない。
待ち合わせ時間の九時。
部屋の窓から外を見ると、うっすらと雪が積もりはじめている。
部屋の窓には結露がびっしりで手で窓を拭わないと外が見えないくらいだ。
レースのカーテンを閉め、ベッドの上に座る。その上に無造作においてあった携帯は静かなまま。
来てるわけない。
だけどこの胸に迫る不安みたいなものはなんだろう。
気のせい、そういい聞かせて布団に包まった。
せっかくの休みだし、寒いからこうして蓑虫みたいに冬眠しよう。傷つくのが怖い臆病者のわたしにぴったりな休日の過ごし方。
瞼を閉じて布団に包まって真っ暗な視界の中でもわたしの頭の中から陽さんが消えてくれることはなかった。
ぼんやりした意識の中でも。
あれは紘くんの姿、陽さんじゃないと言い聞かせても違いに気づいてしまうからたちが悪い。
重症すぎるでしょ……もう。