重ねた嘘、募る思い
「……起きなさいよ!」
おもむろに布団をめくられ、一気に現実へ引き戻された。
鬼のような形相の真麻が仁王立ちでわたしを見下ろしている。
「何やってるの? 待ち合わせは?」
寝ぼけた頭で一瞬頭が回らなかった。
「陽が待ってるのに、あんたはベッドでぬくぬく?」
「……行かないってメールしたもん」
「嘘つき」
真麻の何気ないひと言が胸を抉る。
今一番言われたくない言葉だったから。
「嘘じゃない、メールした」
「そうじゃない。『行かない』じゃなくて私を誘えってメールしたくせに。臆病者。もう知らないから」
頭の上からバサリと布団を被せられた。
視界が暗くなって息苦しくなる。
「もう……し……たら、陽とつき合うから」
わたしにかけられた布団の上になにかが当たる感触がした。
たぶん真麻がクッションを投げつけたんだろう。痛くはない。それとほぼ同時に部屋の扉が閉まる音。
最初のほうがよく聞き取れなかったけど、大事な部分はちゃんと聞こえていた。
――陽とつき合うから
両思いだったんだ。
そうだよね。
妙に納得してしまって、乾いた笑いしか出なかった。