重ねた嘘、募る思い
意識はないようで、譫言のようにしきりになにかをつぶやいている。
苦しいのかな、もしかしたら悪い夢を見ているのかもしれない。それなら起こした方が親切なはず。
「陽さん、陽さんっ」
肩の辺りをそっと揺さぶり起こすけど瞼はしっかり閉じられたまま。
眉間の皺に汗の粒が光っている。側に置いておいた水の入った洗面器からタオルをとって絞り、顔を拭うけど起きる気配はなかった。
「陽さん、ねえ。起き……っ!」
再びそう声をかけた時、伸びてきた腕にからめ取られるように抱きしめられた。
それはあまりにも突然で、一瞬のこと。
構える体勢もとれないまま、わたしの上半身はなだれ込むように陽さんの身体の上に乗り上げ、耳元にかかる吐息が熱くてぞくりとした。
こんなに弱っているのに抱きしめる力は強くて。
背中に回された手からも顔をうずめてしまっている胸からも熱い陽さんの温もりを感じた。
しっとりとしたパジャマからはわずかな汗の匂い。それすらも胸が苦しくなるくらい愛おしくて、自分がこんなにも陽さんを欲しているんだって改めて実感した。
このままじゃいけないと思いながらも離れなかった。離れたくなかった。
真麻に見られたらまずいのに、陽さんのパジャマの胸辺りをぎゅっと握りしめてしまう。
その時。
「――あさ……」