重ねた嘘、募る思い

11.対峙する真麻とわたし、そして陽さん

 
 玄関近くで倒れ込みそうになった陽さんをぜいぜい言いながらふたりで布団に戻した。
 こんなに細い身体なのに重かった。もしかしたら骨太なのかもしれない。
 暖かいタオルで身体を拭き、なんとかパジャマを着替えてもらってから布団に横たわった陽さんの横に真麻とわたしが向かい合わせに座る。
 なんだか変な雰囲気になってしまったけどしょうがない。
 陽さんも挟まれてしまって居心地が悪そうだった。しかもひとりだけ臥床状態だから。

 陽さんが倒れそうになって、すっかりわたしの涙は止まってしまっていた。
 ひとりで取り乱して思わず逃げ出してしまったけれど、考えてみたら陽さんは真麻とつき合っているのだから寝言で名前をつぶやくのは何ら不思議ではないのだ。
 冷静になってそのことに気づいたわたしはただただ恥ずかしさと情けなさに苛まれ、まともに真麻とも陽さんとも目を合わせることができずにいた。
 
 真麻が持っていたビニール袋から何かを取り出してわたしに向ける。
 横たわった陽さんの身体ごしに手渡されたのはわたしが好きでよく飲んでいるミルクカフェオレの缶。

「のんちゃん、それ好きなの? 僕が淹れるカフェオレの方がっ、ごほっ、ごほんっ! おいしっ、ごほっ」
「缶コーヒーに嫉妬とか……」

 はじかれたようにむせ出す陽さんに真麻が呆れたような眼差しを向けた。
 しかも冷ややかな口調で、とてもつき合い始めたばかりの恋人同士には思えないほど。

 それに真麻の言っていることの意味が全くわからなくてわたしはわずかに首を傾げた。


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