重ねた嘘、募る思い
「ところでのんはなんで泣いてたの?」
真麻に鋭い視線で睨みあげられ、ぐっと息を飲む。
とにかく誤魔化そうとカフェオレを開けようとするけどうまく爪がひっかからなかった。
もうそのことに触れないでほしい。
もう泣いていないんだからなかったことにしてくれないかな、という淡い希望はやっぱり叶わなかった。穴があったら入りたい。
「僕のせいだから、のんちゃんを責めないで」
「いったい陽はなにをしたのよ」
喉元までこみ上げてきそうな咳を押さえ込もうとしている陽さんに真麻がペットボトルの飲み物を渡した。
ゆっくりと起きあがった陽さんがそれを数口飲んで、はあーっと大きなため息を漏らす。
「ごめん、たぶんのんちゃんを抱きしめた」
「――はあっ?」
心底申し訳なさそうな表情でちらっと上目遣いの瞳がわたしを見上げ、深く頭を下げた。
ごめんだなんて謝らないでほしかったし、その言い方は語弊がある。
眉をつり上げて驚きの声をあげる真麻が誤解して怒りを覚えてしまうのも無理はなかった。
「真麻、違うのっ! 陽さんは真麻とわたしを間違えて抱きしめただけでっ! 熱に浮かされてたからっ、だから許してあげて」
今度はわたしが必死で頭を下げる番だった。
真麻の機嫌が直ればもうそれでいい。わたしの気持ちなんてもう。
そう思っていたのに。
「は? 意味わかんないし」
真麻が不満そうに顔を歪めて首を傾げた。