重ねた嘘、募る思い

「あの、真麻ちゃん」
「陽は黙ってて。あんたの言い分は後で聞くから」
「……でも」

 ただならぬわたし達の雰囲気を感じ取ったであろう陽さんが助け舟を出してくれたんだと思う。
 だけどそれを真麻が一蹴した。
 あんたって……年上に向かってそんな言い方はない。しかも恋人に向かって。あ、恋人だから許されるのかな。

 ――恋人だから。

 そのフレーズがわたしの靄がかかったような頭の中を巡った。

「のんが変われるかどうか、今が正念場なの」

 真麻の言葉に陽さんの視線がわたしにぶつけられるのを感じた。
 わたしが、変われるか。

 自分の中でくすぶっている陽さんへの思いをぶつけて、ここでちゃんとフラれておけということなのだろう。
 きっとそうだ。真麻が言いたいことはそれなのだろう。そうに違いない。
 ぐっと唇を噛み締めて下から真麻を見上げると、まるで転んだ子どもが自分の力で立ち上がるのを待っているかのような顔をしていた。
 
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