重ねた嘘、募る思い
「っ、たぃ……」
「私の手だって痛いわよ」
その瞬間、理性がとんだ。
なぜだかわからない。今まで押さえつけていた自分の中の何かがぶちんと音を立てて切れたようだった。
しっかりと編みこまれた縄みたいなものが少しずつ劣化して解れ、すでにわずかにしか繋がっていなかった状態だったのかもしれない。
「じゃあなんで殴るのよっ!」
わたしは陽さんの布団越しに真麻へ飛びかかっていた。
もつれ合いながら倒れこむわたし達を陽さんはどんな目で見ていただろうか。そんなことは知らない。知ったこっちゃない。
「真麻にわたしの気持ちなんかわかんない!」
「わかるもんですかっ! いっつもいい子ぶっちゃってムカつくのよ!」
「わたしは真麻じゃないもんっ! それなのにそれなのにっ……お母さんもみんなもっ、真麻真麻ってムカつくのっ! 従姉妹だからって比較されてどんなに辛かったかあんたになんかわかんないっ――」
わたしは泣きながら「真麻のばか」と繰り返し、握りこぶしで真麻の胸の辺りをボカスカ叩いていた。
一方真麻も「のんのばか」と繰り返しながら、覆い被さられた状態でわたしを叩き続ける。