重ねた嘘、募る思い
そんなわたし達をきっと見かねたのであろう陽さんが止めに入ったのは言うまでもない。
真麻の上に圧し掛かっているわたしの身体を抱え上げ、後ろから羽交い絞めにされてしまう。
わたしの身体の重みがなくなった真麻がむっくりと起き上がり息を切らしてわたしを睨みつけた後、ぷっとふき出した。ぽかーんとその笑顔を見つめると、さらに楽しそうに声をあげる。
「言えるじゃない。それでいいの」
「はあっ?」
「自分が言ったこと覚えていないの?」
はあっと大きなため息を吐きながら不思議そうな表情で真麻がわたしを見て首を傾げる。
わたしが言ったこと?
「のんは私じゃない、当たり前のことでしょう。それに、陽に私と間違えられて悔しかったのよね」
ずり落ちた眼鏡を元に戻されてすうっと真麻の手に左頬を優しく撫でられた時、我に返る。
そうだ、その通りだ。
胸の奥に溜まっていた膿みたいなものが急にさあっと引いてなくなるような感じがした。