白雪姫の王子様




ふふっ。


私は“それ”を手に取ると、勉強机に向かって座った。


じっと、その表紙の3文字を見つめる。



“白雪姫”



小さい頃大好きだった、宝物の絵本。


太一兄ちゃんにも無理やり何度も見せてたなー。


“こんなのの何がいいんだ?”って、この本の良さは全然わかってもらえなかったけど。


それでも、私が夢中で話すのを、いつも嫌な顔一つせず聞いてくれた。


不注意で失くしちゃった時だって、泣いてる私を励まして、必死になって一緒に探してくれて……。


ここに持ってきてよかった。


──この絵本には、大切な思い出がたくさん詰まっている。


あの頃の思い出が一気に溢れて、なんだか胸がいっぱいになった。




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