白雪姫の王子様
『で、今どこにいるの?』
「え。そ、それが、えーと……」
『もしかして迷子?』
「はい……」
直球極まりない一言は、心臓のど真ん中にグサリと突き刺さった。
自分のどうしようもなさに、つくづく嫌気がさす。
『何か近くにある?』
「あ、えっと、今すっごく大きい水槽の前にいるんだけど……」
『すっごく大きい水槽?』
詳しく説明しようと考え、次の言葉に詰まっていた時だった。
“由利ちゃん、ちょっと借りるね”
そう、電話の向こうで小さく聞こえたかと思った刹那──。