白雪姫の王子様
──って。
そ、そそそ、そんなわけ!
激しく脈打つ心臓にそっと手を当てる。
だって、犀川くんには“想い人”がいるのよ?
私なんかが入り込める余地なんて、微塵もない訳で。
助けに来てくれたのも、優しい犀川くんにとっては当たり前のことでしょ?
そ、そうよ。きっと近江くんの思い過ごし。そうに決まってる。
でも……。
──何で私、さっきからこんなにもドキドキしてるんだろう?
そもそも、捜し出して迎えに来てくれたあの時から、私の心は明らかにおかしい。
今日の私、変だよ……。
……もしかして。
犀川くんのこと、好きになっちゃった……?
だけど私が好きなのは、太一兄ちゃんの筈。
ねぇ、これはどういうこと?
こんなのおかしいってわかってる、でも。
どっちの感情も、確かに私の中にあるんだもん。
正体不明の胸の高鳴りは、暫くの間収まることはなかった。