白雪姫の王子様




──カチ、カチ、カチ。



上昇と共に等間隔に響く音が、やけに緊張を膨らませる。


間も無く頂点。


それを越えると、休む間もなくくるりと一回転が待ち構えている。



グッ──。



安全バーを握る力が時を経るにつれ強くなって行く。


ちょ、ちょっと待って。まだ心の準備が……!


浅原白雪15歳。まだこんな所では死にたくない。


やりたい事だって、伝えられてない事だってたくさんあるの。


ねえ、だからお願い神さ──。



「ぎぃやあああああ!!!!」



当然、私の願いも虚しくコースターは天から地へととてつもないスピードで落ちていく。


こんにちは、逆さまの世界。


ほんの一瞬が、まるで数十秒のように感じたのは言うまでもない。




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