白雪姫の王子様
でもまさか、この歳でコーヒーカップに乗るなんて思ってなかったな。
それも、好きな人と……。
溢れ出す温かい想いに、幸せを噛み締めそっと目を閉じた。
「ちょっと目がぐるぐるするな」
「ふふ」
降りて開口一番、まさかの言葉にくすりと笑ってしまった。
それに──。
「ハンドル回しすぎるからよ……って、犀川くん!?」
「あれー、おかしいな〜。景色が歪んで見えるよ~」
「ちょっ、大丈夫!?」
どこが“ちょっと”なのよ!?
並んで歩く彼は、酔っ払ったみたいにフラフラ千鳥足。
目は漫画だと渦巻きで描かれそうなくらいにぐるぐる動いている。
絶叫系は全然平気なのに、コーヒーカップは苦手とはね……。