白雪姫の王子様
──……
「ただいまー」
「おお、おかえり」
外はすっかり薄暗い。
というのも放課後、文化祭の出し物決めが長引き、いつもより少し帰るのが遅くなってしまったからだ。
「ありがとう」
口には出さないものの、中々帰らない私を心配してか珍しく玄関で迎えてくれたおじいちゃんの優しさが擽ったくもやけに心地好くて、小さく呟いた。
「犀川くんは?」
「今風呂に入っておるよ」
「そっか」
それにしても、あの話本当なのかな……?
今朝から私の心は真っ白な霧に覆われたままだ。
『──その子は、同じクラスの三浦萌菜(みうら もえな)って噂よ』
家までの道のりの間もずっと、そんな彩香ちゃんの言葉が耳から離れず何度も頭を駆け巡っていた。
“三浦萌菜”
恐らく彼女は、この前私が資料室で見た、“三浦さん”って呼ばれてた子。
『放課後2人きりで親密そうにしてる所を、もう何人も目撃してるの』
そう言われてみれば、三浦さん犀川くんに親しく話しかけてたしなぁ。
でも、彩香ちゃんは本人に確かめたわけじゃないって言ってたし……。
ああだこうだ考えたって、真実がわからない以上曇った心は晴れるわけない。
──ガチャ。
その時、犀川くんがお風呂から上がったらしく、ドアの音が遠くの方で響いた。