白雪姫の王子様




そう言えば、犀川くんのクラスって絵の具使ってたよね?


ちょっと分けてもらえないかしら……。


ふと頭にはそんな思いが過ぎり、ひとまず私は彼がいるであろう7組の教室へ向かうことにした。



「もしよかったらなんだけど、絵の具貸してくれないかな」



廊下でゴミの後片付けをしていた彼を見つけると、すぐさま名前を呼んで頼み事をする。


すると、一瞬だけ目を丸くしてからこんな風に快く返事をくれた。



「それならこれを使って」


「え、こんなにいいの?」



持って来てくれた絵の具は想像以上に種類豊富で、まだどれもほぼ中身が残っているのもばかりだった。


聞くと、丁度絵の具での作業を終えたところだったらしく、寧ろ余っていて使って欲しいくらいだと言う。



「本当に助かるよ。ありがとね」


「いいって、困ったときはお互い様だろ?」



やっぱり優しいなぁ……。


彼のそういうところに、私自然と惹かれてたのよね。


感謝の気持ちを述べ、いざ多目的室に戻ろうとした、その時だった。




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