白雪姫の王子様




「よぉ、白雪」



た、太一兄ちゃん……!?


小さく手を上げるその姿に、目は釘付けになる。



「嘘、もしかしてあれが噂の?」


「……うん」



何でこんな所に?


思考がついていかない。



「行ってきなよ。あんたのこと迎えに来たんでしょ、きっと」



由利に背中を押され、私は太一兄ちゃんの元へ近付いた。



「ほらよ」


「あ、ありがと」



差し出された1本の黒い傘に反射的に手を伸ばす。


それから、“帰るぞ”という低い声に促されるまま、私は足を動かした。



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