白雪姫の王子様
『白雪ー!』
『た、太一兄ちゃ……』
その時、1人の少年はこちら目掛けて駆け寄ってきた。
『てめぇ、そいつから離れろ!』
そう叫んだのは、正に私と遊ぶ待ち合わせをしていた、太一兄ちゃんだった。
その声は力強くて、眩しくて、でも優しくて、私にこれ以上もない程の安心を与えてくれた。
『はぁ? 何だ貴さ──ぅお、おおおお前はっ! まままさか、東中2年の……西嶋太一!? ぜ、全国空手大会で中学生にして高校生相手に完封勝利したっていう、あの……っ!』
顔面蒼白とは、まさにこの事だ。
ボソボソと1人呟きを始めたかと思えば、何やら壮絶な恐怖をおぼえたらしく、一目散にこの場を去っていった。