白雪姫の王子様




「荷物、ちゃんと全部段ボール箱に詰めたわよね? 忘れ物はない?」


「大丈夫よ。昨日何度も確認……あっ!」



──そうだ、あの本。


小さい頃大好きだった、『白雪姫』の絵本。


自分と同じ字をしたプリンセスがいるなんて……。それがなんだか嬉しくて、妙に気に入った私は、誕生日プレゼントに絵本を買ってもらったんだ。


今朝夢を見るまですっかり忘れちゃってたけど、確かまだ押し入れに……。



「あった!」



懐かしい。ちょっと色褪せてるけど、思ったより綺麗だ。


昔はずっと肌身離さず持ち歩いてたっけ……。


よし、これも持って行こうっと。



「ちょっと何してるの。お母さんもう行くけど、早くしなさいよ?」


「はーい」



元気に返すと、胸に抱いた絵本を段ボール箱の中に詰めた。


着替えを済ませ、いつも通り長い髪を2つに結い上げると、私は高鳴る想いを胸に階段を駆け下りた。




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