白雪姫の王子様
──……
「いただきまーす」
元気の良い声が轟いて、道場は一気に華やかな空気に包まれる。
その中で、私は少し肩身の狭い思いをしていた。
というのも──。
「あの、犀川さんって、彼女いるんですか?」
「彼女? いないよ」
「きゃーっ、よかったー! じゃあ白雪さんとは何でもないんですね」
ぶっ! なんでそこで私の名前があがるのよ!?
そして、いやみったらしい顔してチラチラこっちを見るなぁ!
「……白雪は──」
「あっ! じゃあ〜、どんな人がタイプなんですかぁ?」
「うーん、そうだな……」
──そう。
さっきからずっとこんな調子で、女の子達の視線は全て犀川くんに真っ直ぐ注がれているのだ。
黄色い声を上げる彼女達は、興奮したように彼を取り囲んでいる。
「何だあれ」
「ね」
私は一歩引いたところから、冷めた目をしてその光景を眺める男の子達に混ざり、おにぎり片手に苦笑いを浮かべた。