白雪姫の王子様




──……



「それじゃあ、練習再開」


「「はい!」」



結局、私の作ったお弁当を残さず全部食べてくれた犀川くん。


それはやっぱり嬉しくて、私は彼の優しさを身にしみて感じた。


1人へそを曲げている自分が、何だか恥ずかしくなるくらい。


そして稽古が始まった今、犀川くんはまた普段とは別の顔に変わっていた。



「これが本当に、あの犀川くんなのよね……」



私はチラリとしかその姿を見ることができない。


……だって、空手をやってる時の犀川くんって、いつにも増してかっこよく見えるんだもん。


ほんと、何なんだろう。


いつもはあんなにフワフワした感じなのに……それがキリッとした雰囲気に変わって、男らしくなるというかなんと言うか。


さっきまで子どもみたいな表情してたのに、急にまた大人っぽい表情に変わるなんて、ある意味反則だと思わない?


そうやって、なんとなく考え事をしながら練習風景を眺めている時だった──。





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