愛してるの代わりに
動き出すふたり
☆動き出すふたり☆


あれから13年。

雛子は高校・大学と進学した後、6年前に地元の市役所に就職した。

先程まで雑誌に映る慎吾の姿に黄色い声を上げていた同僚たちの話題は移り、恋愛話に移行していた。




2か月後に結婚式を控えた人間と、数週間前に恋が成就した人間。

そんなふたりがランチをしているのだから、恋の話に華が咲くのは仕方のないこと。

もちろん、雛子も同期である同僚たちの幸せな姿を見るのは嬉しい。

だからこうやって時間も合えばランチにも行くのだが。




「後は崎坂、アンタだけだよ」

「……え?」

「もー。仕事はバリバリやるのに、ホントぼんやりしてるよねえ、崎坂」

「しっかしこれだけ可愛いのに、なんで彼氏出来ないの?」

「あ。いないいないって言ってて、まさかいるのに隠してるなんてこと」

「ない! ないないっ! ホントにいないってば!」




自分たちが幸せだからと、最近は事あるごとに雛子の恋の心配をしてくれるのだ。

もちろん彼女たちに悪意はない。

雛子にも幸せになってほしい、そう思ってのことだというのは十分理解している。




だけどもう少し、そっといておいてほしいな。




崎坂にはこういう人が似合う。

いやいや、こういうタイプのほうが。




ああでもない、こうでもないと雛子の恋人候補を上げていく同僚たちに適当に相槌をうち、この日のランチは過ぎていった。
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