愛してるの代わりに
ツー、ツー、ツー……




「……雛のヤツ、切りやがった」




何回電話を耳にあてても、聞こえてくるのは通話終了の信号音だけ。

通話終了のボタンを押し、自分の次の行動を慎吾は考える。




雛子からかかってくるのを待つべきか。

はたまた、自分からかけるべきか。




電話の途切れる最後の言葉は、『慎くんのことが好き。大好き』だった。

恐らく、空耳ではないだろう。

告白、だとは思う。

産まれたときから知っている幼馴染からの告白。

彼女の性格上、自分から告白なんてしたことは一度もないはずだ。

精一杯の勇気を振り絞って電話をかけてきてくれたのだろう。

振り返れば上京してから14年、慎吾から連絡を入れることはあっても、雛子から連絡が入ることはなかった。

恐らく慎吾の仕事が不規則なこともあり、気遣っていたのだろう。

しかし、慎吾から連絡をすれば、それにはきちんと応えてくれる。




そんな雛子が、自分から連絡をしてきて、自分の言いたいことを言ってきた。

これに自分はどう応えればいい?

カバンの中から手帳を取り出し、ページをめくる。

明日から2日間、偶然にもスケジュールは空白だ。




『間違いなく2日間はオフよ。ゆっくり休んで』

念の為マネージャーに仕事が入っていないことを確認する。




雛子から着信が入る様子はない。

「明日、考えるか」

大きく伸びをして、慎吾は今日の疲れを取るべく、浴室へと向かった。
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