愛してるの代わりに
「ま、その頃の借りはちゃんと返すから安心しろ、慎吾!」
「そうだよ。それに、私は雛子ちゃんにも借りがあるし」
「え? 私に?」
一体何のことを言っているんだろう?
きょとん、とした雛子を見て、咲良の目が軽く見開かれる。
「そっか。雛子ちゃんわかんないよねぇ。実は私も雛子ちゃんの勉強ノートのお世話になった人間なんだ」
「え、あのノート、咲良ちゃんも見てたの?」
「見てた、っていうか慎吾くんの横から無理矢理見てたんだけどね」
ペロっと咲良が舌を出す。
「私含め、高校時代の仲良し4人組が留年もせずに卒業できたのはホント、雛子ちゃんのおかげなんだから」
「大げさだよ、咲良ちゃん」
「いや、そんな大げさでもないんだよ、実は」
慎吾の言葉に咲良も大きくうなずく。
「ホントに雛のノート見やすくて助かったんだから。咲良ちゃんだけじゃなくて他の2人もいっつも言ってたもんな、お礼言いたいって」
「そうそう。今日も慎吾くんと会うのに引っ付いていく~って言ったらすごく悔しがってたよ。ふたりともちょうど海外に仕事行ってるからさ」
「そんな風に言ってもらえるとすごい嬉しいよ、ありがとう」
「だから、絶対に借りは返すからね!」
「……はいはい、わかりました」
咲良の元気過ぎる宣言を軽くあしらう慎吾の横顔を見つめながら、雛子は慎吾がいい人たちに囲まれて生活していて本当によかったなあと実感していた。