愛してるの代わりに
ふたりきりの夜
☆ふたりきりの夜☆



楽しかった時間はあっという間に過ぎ、翔の「そろそろ出ようか」という合図と共に、それぞれが帰り支度を始めた。

雛子が目の前にある伝票と取ろうとすると、すっと手が伸びてきた。

「雛子ちゃん、いいよ。ここは俺のおごり。みんなもお兄さんにおごられなさい」

翔の言葉に4人で「ごちそうさまでーす」と声を揃える。

「それと、雛子ちゃんと未来ちゃんは俺たちの車でホテルまで送っていくよ」

「え、いいんですか?」

「ああ。慎吾はどうする?」

「あ、俺はこいつらのホテルと逆方向なんでタクシーつかまえます」

「そっか、気をつけてな」




はい、とうなずき、慎吾は雛子の方へ顔を向けた。

「ごめんな、あんまりゆっくりできなくて」

「ううん。今日こうやってお食事できただけでも楽しかったよ。ありがと、慎くん」

ポンポン、と頭を撫でられ、少しくすぐったい気持ちになる。

「じゃあ、またな」

「うん、またね」

慎吾がタクシーに乗るのを見送った後、雛子と未来は翔の運転する車で宿泊するホテルへと向かった。




「じゃあ、ふたりとも旅行楽しんでね」

助手席のドアを開け手を振る咲良に、ふたりもニコニコと手を振り返す。

「雛子ちゃん! えっと、なんて言ったらいいんだろ……」

「咲良ぁ。慎吾にまた借り作る気か?」

「……あ、そうだね、とにかくまたね!」

「う、うん。また」




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