愛してるの代わりに
「でももし、慎くんが失敗しちゃっても」
「どんな時でも私は慎くんの味方だよ」
「行ってらっしゃい」
頬に軽く口づけをし、明るく手を振る。
「……行ってきます!」
すっかり元気の出たらしい慎吾が、満面の笑みで玄関を飛び出した。
慎吾を見送りながら、雛子はそっと、自分のお腹に手を当てる。
「帰ってきたときに、いい報告ができるといいな」
昨晩の自己検査の結果が正しければ、お腹には新しい命が宿っている。
慎吾に余計な心配は掛けないよう黙っているが、この後病院でちゃんと診察してもらおう。
慎吾がこの幸せな報告を受けるのは、これからあと数時間後のこと―――
【Fin】