婚約者の憂鬱
「でも、まぁ……これで、大体の方針は決まりましたね」
「え?」
カインの一言に、ふたりはただ目を見開く。
どういう意味だろうと考える間に、手にしていた名簿をアレックスに差し出す。
「ハーベスト卿は、彼女たちの裏取りをお願いします。
これからロートレックへ行って、昨夜のお礼とか、うまいこと言って、この呑んだくれ騎士が何をしたか聞き出してください。くれぐれも、『紅灼竜の牙』の名前は出さないように」
「了解!」
カインの指示に元気よく返事して、アレックスは名簿を受け取った。
そのまま、うきうきと部屋を出ていく。
ジェラルドの勘だが、今日はもう兵舎に戻ってこないと思った。
続いて、カインがその後を追う。
「さて、僕たちも行きましょうか」
「どこへ?」
黒髪の司祭が横目で笑った。
「ユベール卿のところですよ」