婚約者の憂鬱




 だったら、何故、覚えていないのだろう。
 所詮、詰めが甘いということか。



「大方、そんなこったろうと思いましたよ」

 背後で、吐き捨てるように呟く声が耳に届く。
 カインの口ぶりから、何もかもわかったらしいラファールは苦笑する。


「そういう気遣いができるのだから、次からはほどほどにしておけ。あまり、陛下に迷惑をおかけするなよ?」

 ジェラルドは、受け取った愛剣をじっと見下ろした。






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