婚約者の憂鬱
すると、ラファールはラファールで真面目な顔つきで問い返す。
「そうだったのか」
「明らかに関係ねぇだろ、それ」
即座に、ジェラルドが突っ込む。
アレックスは何かと理由をつけて自分をいじりたいらしい。
はた迷惑な話だ。
「しかし、いつ何時も女王の御身を案じるのが、王宮に仕える者の義務だろう。それに、何か部下が悩んでいるなら、相談に乗ってやりたい」
「それには、激しく同感です」
あくまでもラファールが食い下がろうとした時、背後から凛とした声が聞こえてくる。
「女王と共にこの国を背負って立つ未来の夫たる言葉とは思えません。今すぐ婚約を解消した方がよろしいかと」
誰かを彷彿とさせるような毒舌だった。
ぎょっとした三人が、一斉に振り向く。
「なーんちゃって」
しかし、目の前に現れたのは黒衣の司祭ではなかった。
十七、八歳であろう少女が心底おかしそうに笑っている。
白銀の髪に、黄金(きん)の瞳。
なめらかな肌は、白い絹のよう。
元より整った顔立ちは神秘性をたたえ、可憐な容貌がさらに際立っていた。