婚約者の憂鬱
「幽霊退治をする。カイン、おまえの知恵を貸せ」
鼻がくっつきそうなほど、ジェラルドはしかめっ面を寄せる。
一方の寄せられたカインは眉ひとつ動かさない。
「そうですか」
とだけ呟いて、視線を手元の書物に戻す。
王宮中を歩き回り、やっと見つけたにしてはぞんざいな扱いだった。
ジェラルドは殴りかかりたい衝動を何とかこらえる。
彼がいるのは、王立図書館だった。
古書や学術書だけでなく、大陸中の歴史が詰め込まれている。
「いやいや、カイン。リアクションが違う。普通、『それで?』とか『僕でよければ、喜んで』とか言うところよ」
背後にいたアレックスが半ば強引に、話を了承させようとする。無邪気に言う彼でなかったら、厚かましいと思われるかもしれない。
ちなみに、ラファールには仕事があるようで兵舎前で別れていた。
「冗談もほどほどにお願いします。大体、今まであの娘さんが持ってきた話は全て厄介事じゃないですか。面倒になることは確実です。賭けてもいいですよ」