婚約者の憂鬱






 五百年ほど前。
 セナンクールが建国される以前のことである。

 ある小国の王女が望まれぬ結婚を強いられた。
 彼女は、自分に仕えてくれる騎士と恋仲になっており、頑なに拒否をし続ける。

 父親である国王は激怒し、恋人である騎士を処刑し、結婚式まで王女を幽閉した。

 心労から王女はみるみる衰弱し、結婚した間もなく息を引き取る。

 それから毎夜、王女は愛しい恋人を探して泣いているという。

 彼女が病に伏した場所こそ、今現在のレオ宮にある東側の塔とされている。






< 25 / 50 >

この作品をシェア

pagetop