婚約者の憂鬱




 これだけの情報で、幽霊の正体を何故見破ることができたのかと思案していると、



『何故だ……何故だ……』



 ぼそぼそと低い男の声が聞こえてくる。

 しかも、複数。

 即座に、ジェラルドとアレックスが立ちあがる。

「うわわ。本当に聞こえた……」

「引っつくな、暑苦しい」

 ぴったり寄り添うアレックスに、ジェラルドは顔をしかめた。
 不意に、カインが天井を見上げる。

「証言通り、声は最上階から聞こえますね」

 カインは臆することなく、さっさと歩いて行ってしまう。
 正体を見破ったからなのか、彼の足取りは軽い。

 ジェラルドたちは、すぐに彼のあとを追う気にはなれなかった。






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