婚約者の憂鬱






 黒衣の司祭が、燭台片手に薄暗い螺旋階段をあがる。



『どうして……何故、俺たちは……』



 さめざめと涙に暮れる声に耳を澄ませると、錆びた鉄の扉の前にたどり着く。

 先頭に立つカインは躊躇いもなくそれを開けたので、アレックスは「ヒッ」と小さな悲鳴をあげた。

 一瞬だけ、カインの動きが止まる。
 不思議に思って背後から中を覗けば、



「おまえらは!」

「た、隊長……?」

 部屋の中央に顔馴染みの若い騎士たちが六人ほど、燭台を取り囲むように座っていた。






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