婚約者の憂鬱
今回の事件は、青年騎士たちの不安からくる珍騒動だ。
出会いがないと嘆く彼らの不安を解消してやるしかない。
仕方ないので、ジェラルドがアニスに騎士たちの手紙を配達するよう段取りをつけた。
騎士団をよく知る彼女が、意中の娘に手紙を渡してやるという趣向。
反応は上々で、まだ三日しか経っていないのにいくつかカップルが成立したとかしないとか。
「何はともあれ、事件は解決したんだし。アニスちゃん様々だね」
無邪気に笑うアレックスは、一通の手紙を取り出す。
「何だ、それ」
「アニスちゃん宛の手紙。さっき、うちの隊から預かって来たんだよね」
「物好きもいるもんだな」
ジェラルドは呆れた声で呟く。
アニスは無類の男嫌いだ。
言い寄ってきた貴族は皆、彼女の細剣(レイピア)の餌食になっている。
「何せ、一目を引く容貌だからね。結構モテてるみた……」
カインが無表情のまま、おもむろに燭台から蝋燭を抜き取った。
芯に火をつけて、さっと手紙に近づける。