婚約者の憂鬱




「浮浪者とかが悪さしてるのかもよ? 近頃、レパフレスからの流れ者が多いし」

 祭壇に座るアレックスが、意外にまともなことを言う。

 子供の遊び場くらいにしか、利用できない遺跡である。
 隊商を狙う盗賊か、隣国から流れたならず者という見方が妥当だった。

 すると、キャロルはそばかすのある顔をくしゃりと歪める。
 今にも泣き出しそうだった。

「……でも、カイン先生が教えてくれたもん。主を失った召喚獣は、今も神殿で眠り続けてるって」


 そこでアレックスとジェラルドが、側にいた黒衣の司祭を見る。
 こんな子供に何を教えたのかと内心、焦った。




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