婚約者の憂鬱




「最後の召喚師は、呼び出した召喚獣に眠るよう命令したんでしょう? 自分が死んだ後に、彼らを使って戦争をしてほしくないから」



 伝説は語る。

 歴史上最後の召喚師は、永世中立国リトラルの第一聖女ソフィー・ヴァリス・ルカ・シャンティだとされる。


 彼女は、息を引き取る瞬間に自身が使役していた召喚獣たちに眠るよう命じた。

 理由はキャロルが言うように、自分の死後に戦乱を危惧してのことだったらしい。



「彼らは不滅の魂を持ってるのに、ソフィーとの約束で眠っているのよ。もし、それを起こして利用する人がいるなら可哀想」


 ぽつりと呟く言葉には優しさがあふれていて、今にでも零れ落ちそうだ。

 ジェラルドに無視できるはずもない。


「……わかったよ。調べてやるから、しばらく神殿跡で遊ぶなよ」

 渋々といった顔で了承するも、

「うん!」

 キャロルは、零れんばかりの笑顔を見せた。
 それだけで、彼女の気持ちがわかってしまう。


 すぐさま、アレックスとカインが振り返った。




< 39 / 50 >

この作品をシェア

pagetop