婚約者の憂鬱
『紅灼竜の牙』。
正式名称は不明。
その昔、竜騎士に仕えていたドラゴンが、自身の力を剣に宿したものだと伝えられている。
刀身は紅く煌めき、ひとたび振るえば紅蓮の炎で敵を焼き尽くすという。
現在では、それを模した剣、あるいは鉄剣を紅く鍛える技術をさす。
『鉄紅石(てっこうせき)』と呼ばれる稀な鉱物を使用し、扱える職人も少ない。市場に出回れば高値で取引される代物だ。
そもそも、『紅灼竜の牙』は先代国王より下賜された剣である。
間違っても他人に盗まれていいものではない。