婚約者の憂鬱




「何でも例外はあります。念には念を入れて損はないですよ」

 神殿に似つかわしくない罠が仕掛けられている時点で、何者かが侵入を拒んでいるのは間違いない。
 ジェラルドは、胸中で冷や汗をかいた。

 キャロルの話を軽んじた自分を恥じる。
 子供たちが罠に引っ掛からなかったことが幸運だった。
 一旦、戻って対策を練り直した方がいいかもしれないとジェラルドが考え始めると。

 真横で、石の擦れる音がした。見ればアレックスが壁についた手が窪みに嵌まっている。



「ん? 壁が、へこんじゃった」

「何ッ!?」

 ジェラルドが慌てて剣を抜いた瞬間、足元が浮遊感に襲われる。




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