婚約者の憂鬱




 ジェラルドが最悪のシナリオを考えはじめた時、アレックスが間抜けな声をあげる。

「ええ? 今さら?」

「むしろ、今まで目を瞑ってくださった陛下に感謝すべきですよ」

 この悪友ふたりは、どこまでも容赦がない。
 あくまで「ちゃらんぽらんなあんた(ジェラルド)が悪いんだよ」と主張する。

 最早、一言の弁明もできなくなった頃、ようやくカインが椅子から立ち上がった。

「さて、前置きはこれくらいにしておきましょうか。このまま放っておいたら、僕にとばっちりがこないとも限りません。
 現時点では記憶が曖昧というだけで、まだ盗まれたと決まった訳でもなし。まずは、心当たりを探ってみましょう」

 一応、助けてはくれるらしいが、言い方がものすごく気になる。







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