音の生まれる場所
夏芽のドラムのリズムに合わせてスケールの練習。
さすがに毎日やっていたから、音は出るようになった。
「なんだ、思ってた以上に吹けるじゃねーか」
「音程も合ってるし、勘取り戻してるよ」
「真由の音懐かしー!サイコー!」
夏芽が感動してる。
「でも、まだまだ自信ないよ。息も続かないし、曲だってまだ吹けないし…」
指の動きがすっかり鈍くなっている。七年のブランクはやっぱり大きい…。
「何も吹けねぇって事はねーだろ。教本見ながら練習してるんだから」
ハルがペラペラページを捲る。
「そりゃまぁ、少しはあるけど…」
ゆっくりした曲なら…と言うと、教本に載っていた楽譜を指差された。
「こいつ吹いてみろよ」
「なになに⁉︎ 」
夏芽が覗き込む。
「『故郷』か。いいんじゃない?ゆっくりだし、そんなに難しくないし」
シンヤが譜面を見て納得する。
「吹ける?真由」
期待の眼差しでこっちを見られた。
「うん…多分。何度か練習で吹いたから…。あっ、でも、ホントに下手だし音もかすれるよ!」
仲間と言えど、人に聞かせられるような腕前じゃない。ホントは聞かせたくないのが本音。
「いいって!とにかく吹いてみてよ!」
「下手でも笑わねーから」
「そうそう」
三人の有難くない言葉に躊躇いながら、一応フルートを構える。
この曲は中一の頃、一番最初に吹けるようになった思い出の曲。
あの頃に戻ったつもりで吹いてみるか…。
息を吸い込んでフルートに息を送り込む。
鳴り出した音の中に、思い出をたくさん詰め込んで……。
フルートを初めた頃、毎日毎日基本練習ばっかでつまんなくて、先輩達がいないのを見計らってコッソリさぼってた。
一番最初の舞台は地域の音楽祭。入部して二ヶ月かそこらで、すごく緊張して吹いた。
それから夏のコンクール、体育祭、文化祭、クリスマスコンサート…
次々と行事で演奏して、その度に皆と仲良くなっていった。
朔と初めてまともに話したのは入部して間もなく。何の楽器をするか決めなきゃいけなかった時。
「小沢何やる?」
先に聞かれた。
「クラリネットかサックスがいいな。遠藤君は?」
「断然トランペット!カッケーから!」
「カッケー…」
男子って単純。
「お前身体小っせーからフルートくらいが妥当じゃねぇ⁈ 肺活量足らねーだろ」
バカにするように笑われた。ひどい言い方するってその時は怒った。
でも、実際吹いてみたらサックスもクラリネットもホントに肺活量が足らなくて…。
「やっぱフルートでいい…」
悔しそう呟くと笑われた。
「いんじゃね?小っせーお前にはピッタリ!」
当時の身長は150センチなかった。160を超えていた朔から見れば、ホントに小さかったと思う。
「小さくても大きな音出してやるもん!」
そう言って張り合った。最初はケンカ友達みたいなライバルみたいな関係だった。
でも、朔と一番気が合った。
個人練習する場所はいつもダブってジャンケンで決めたり、好きなアイスはいつも取り合いになった。
子供みたいにじゃれ合ってばかりいたけど、嫌いじゃなかった。
好きだな…って思い始めたのは中三の夏から。
気づくといつも目で朔を追っていた。
目が合うとドキッとして、胸が苦しくなって、ウキウキしながら話をしていた。
特別仲がいい訳でもないのにひやかされる事も多くて、でも、怒ったように言い返す朔を見るとつまんなくなったり、逆に笑かけられると有頂天になったり…。
バカみたいだな…って思いながら過ごしてた日々。
恋に恋して、いつか想いが届くといいなって、そう願っていた……。
さすがに毎日やっていたから、音は出るようになった。
「なんだ、思ってた以上に吹けるじゃねーか」
「音程も合ってるし、勘取り戻してるよ」
「真由の音懐かしー!サイコー!」
夏芽が感動してる。
「でも、まだまだ自信ないよ。息も続かないし、曲だってまだ吹けないし…」
指の動きがすっかり鈍くなっている。七年のブランクはやっぱり大きい…。
「何も吹けねぇって事はねーだろ。教本見ながら練習してるんだから」
ハルがペラペラページを捲る。
「そりゃまぁ、少しはあるけど…」
ゆっくりした曲なら…と言うと、教本に載っていた楽譜を指差された。
「こいつ吹いてみろよ」
「なになに⁉︎ 」
夏芽が覗き込む。
「『故郷』か。いいんじゃない?ゆっくりだし、そんなに難しくないし」
シンヤが譜面を見て納得する。
「吹ける?真由」
期待の眼差しでこっちを見られた。
「うん…多分。何度か練習で吹いたから…。あっ、でも、ホントに下手だし音もかすれるよ!」
仲間と言えど、人に聞かせられるような腕前じゃない。ホントは聞かせたくないのが本音。
「いいって!とにかく吹いてみてよ!」
「下手でも笑わねーから」
「そうそう」
三人の有難くない言葉に躊躇いながら、一応フルートを構える。
この曲は中一の頃、一番最初に吹けるようになった思い出の曲。
あの頃に戻ったつもりで吹いてみるか…。
息を吸い込んでフルートに息を送り込む。
鳴り出した音の中に、思い出をたくさん詰め込んで……。
フルートを初めた頃、毎日毎日基本練習ばっかでつまんなくて、先輩達がいないのを見計らってコッソリさぼってた。
一番最初の舞台は地域の音楽祭。入部して二ヶ月かそこらで、すごく緊張して吹いた。
それから夏のコンクール、体育祭、文化祭、クリスマスコンサート…
次々と行事で演奏して、その度に皆と仲良くなっていった。
朔と初めてまともに話したのは入部して間もなく。何の楽器をするか決めなきゃいけなかった時。
「小沢何やる?」
先に聞かれた。
「クラリネットかサックスがいいな。遠藤君は?」
「断然トランペット!カッケーから!」
「カッケー…」
男子って単純。
「お前身体小っせーからフルートくらいが妥当じゃねぇ⁈ 肺活量足らねーだろ」
バカにするように笑われた。ひどい言い方するってその時は怒った。
でも、実際吹いてみたらサックスもクラリネットもホントに肺活量が足らなくて…。
「やっぱフルートでいい…」
悔しそう呟くと笑われた。
「いんじゃね?小っせーお前にはピッタリ!」
当時の身長は150センチなかった。160を超えていた朔から見れば、ホントに小さかったと思う。
「小さくても大きな音出してやるもん!」
そう言って張り合った。最初はケンカ友達みたいなライバルみたいな関係だった。
でも、朔と一番気が合った。
個人練習する場所はいつもダブってジャンケンで決めたり、好きなアイスはいつも取り合いになった。
子供みたいにじゃれ合ってばかりいたけど、嫌いじゃなかった。
好きだな…って思い始めたのは中三の夏から。
気づくといつも目で朔を追っていた。
目が合うとドキッとして、胸が苦しくなって、ウキウキしながら話をしていた。
特別仲がいい訳でもないのにひやかされる事も多くて、でも、怒ったように言い返す朔を見るとつまんなくなったり、逆に笑かけられると有頂天になったり…。
バカみたいだな…って思いながら過ごしてた日々。
恋に恋して、いつか想いが届くといいなって、そう願っていた……。