音の生まれる場所
「あの…」
つい口を開く。何も考えてないのに。
「ん?」
カップから口を離しこっちを向く。やばい、何を言うつもりだったの…。
「いえ、あの…」
しどろもどろになりながらネタ探し。それでふと、この間の話を思い出した。
「この前言ってた音をぶつけ合うって意味、今日よく分かりました。ハーモニーが作り上げられていくのを実感しましたから…」
何も知らない私に、コンコンと説明してくれた。酔っ払っていたから、理解するのも相当時間がかかったけど…。
「いい楽団だなってしみじみ思いました。誘って頂いて感謝しています」
誘われなかったらどこにも入らず、今も一人で音を奏でていたかもしれない。
音を重ね合う、曲を作り上げる、何も知らずに寂しいままだったかもーーー
「……坂本さんは、どうして今の楽団に入ったんですか?」
少し考えてる。いや、思い出してる感じで遠くを見つめている。その眼差しがこっちを向いた。
「最初は入る気なんてまるでなかったんだよ」
意外な言葉。驚く私に笑いかける。イタズラっぽく、以前を懐かしんだ。
「音大を卒業した後ソロで活動してたんだ。客演という形でいろんな楽団を回って。今の楽団も初めて参加した時は客演で、一回きりのつもりだった」
初めて練習に参加した時、私と同じ様に驚いた。
皆が音をぶつけ合ってくる。聞かせてみろと言わんばかりに。
「自分の思う様に音を出したら、皆がそれに合わせてくれた。中にはリュウのように納得しない奴もいたけど、何回か音を重ねていくうちにまとまってきた。僕は今まで、客演として自分だけが異色でも許されてきたけど、ここは違うんだな…ってしみじみ思った」
音を合わせて、一つの大きなエネルギーが作り上げられる。
作り上げられたものは感動を生んで、観客の気持ちを掴んでいく。
「会場と一体化する程の熱気を感じたのは、あの時が最初だった…」
浴びたことのない大きな拍手に包まれた。
「これは自分だけに送られた拍手じゃないと思った。皆がいたから得られたんだと実感した」
嬉しそうな顔。今まで見た中で、一番いい表情をしてる。
「それで楽団に入ったんですか?」
質問する私を振り返る。あっ…笑った。
「その時は直ぐには入らなかった。リュウが直接誘いに来たけど、やっぱり断った」
「えっ⁉︎ どうして⁉︎ 」
「プライドが邪魔したんだよ。音大まで行ったのに、一楽団員なんてやってられないって…」
下らないけどね…と笑う。
こだわりの強い所は、きっとその頃からあったんだ…。
「二度目の客演以来があった時、使っているペットの刻印を見て、リュウが先生の作ったものだと教えてくれた。すごい楽器だと思っていたけど、すごかったのは楽器じゃなくて先生の方だったと知った…」
楽器職人を目指しながら楽団に入った。
楽器作りに携わって、音楽の奥深さを追求するようになった。
「柳さんとはその頃から仲良いんですか?」
一緒にお酒を飲む程の関係。
お金の有る無しなんか関係なく、苦楽を共にしてる感じ。
「うん…あいつ一つ年上なんだけど、ちっとも偉ぶらないし、皆に平等で面倒見良くて…いい奴だから」
つい口を開く。何も考えてないのに。
「ん?」
カップから口を離しこっちを向く。やばい、何を言うつもりだったの…。
「いえ、あの…」
しどろもどろになりながらネタ探し。それでふと、この間の話を思い出した。
「この前言ってた音をぶつけ合うって意味、今日よく分かりました。ハーモニーが作り上げられていくのを実感しましたから…」
何も知らない私に、コンコンと説明してくれた。酔っ払っていたから、理解するのも相当時間がかかったけど…。
「いい楽団だなってしみじみ思いました。誘って頂いて感謝しています」
誘われなかったらどこにも入らず、今も一人で音を奏でていたかもしれない。
音を重ね合う、曲を作り上げる、何も知らずに寂しいままだったかもーーー
「……坂本さんは、どうして今の楽団に入ったんですか?」
少し考えてる。いや、思い出してる感じで遠くを見つめている。その眼差しがこっちを向いた。
「最初は入る気なんてまるでなかったんだよ」
意外な言葉。驚く私に笑いかける。イタズラっぽく、以前を懐かしんだ。
「音大を卒業した後ソロで活動してたんだ。客演という形でいろんな楽団を回って。今の楽団も初めて参加した時は客演で、一回きりのつもりだった」
初めて練習に参加した時、私と同じ様に驚いた。
皆が音をぶつけ合ってくる。聞かせてみろと言わんばかりに。
「自分の思う様に音を出したら、皆がそれに合わせてくれた。中にはリュウのように納得しない奴もいたけど、何回か音を重ねていくうちにまとまってきた。僕は今まで、客演として自分だけが異色でも許されてきたけど、ここは違うんだな…ってしみじみ思った」
音を合わせて、一つの大きなエネルギーが作り上げられる。
作り上げられたものは感動を生んで、観客の気持ちを掴んでいく。
「会場と一体化する程の熱気を感じたのは、あの時が最初だった…」
浴びたことのない大きな拍手に包まれた。
「これは自分だけに送られた拍手じゃないと思った。皆がいたから得られたんだと実感した」
嬉しそうな顔。今まで見た中で、一番いい表情をしてる。
「それで楽団に入ったんですか?」
質問する私を振り返る。あっ…笑った。
「その時は直ぐには入らなかった。リュウが直接誘いに来たけど、やっぱり断った」
「えっ⁉︎ どうして⁉︎ 」
「プライドが邪魔したんだよ。音大まで行ったのに、一楽団員なんてやってられないって…」
下らないけどね…と笑う。
こだわりの強い所は、きっとその頃からあったんだ…。
「二度目の客演以来があった時、使っているペットの刻印を見て、リュウが先生の作ったものだと教えてくれた。すごい楽器だと思っていたけど、すごかったのは楽器じゃなくて先生の方だったと知った…」
楽器職人を目指しながら楽団に入った。
楽器作りに携わって、音楽の奥深さを追求するようになった。
「柳さんとはその頃から仲良いんですか?」
一緒にお酒を飲む程の関係。
お金の有る無しなんか関係なく、苦楽を共にしてる感じ。
「うん…あいつ一つ年上なんだけど、ちっとも偉ぶらないし、皆に平等で面倒見良くて…いい奴だから」