音の生まれる場所
「おっさん、何の話してたんだよ!」
いつの間にか話が済んでこっちに戻って来るみたい。
柳さんの声に合わせて振り向くと、妙に真面目な顔をした坂本さんと目が合った。
ドキッ…。胸が震える…。
「先生が紹介してれた外人誰だ?」
近くまで来て聞き直す。きっと私が気にしてたから…。
「県の広報担当者で、ドイツの人らしい」
聞かれたこと以外答えない。もどかしい感じ。
「そのドイツ人がお前にどんな話?」
聞きたがりの柳さん。もはや自分の為に聞いている。
「今度、ドイツの楽団に客演として来ないかって。知り合いが楽団の局長を務めていて、トップトランペッターを紹介してくれって言われたって…」
別に自分はトップな訳じゃないけど…って、十分トップレベルの人が言う。
「すごい!」
「もっさん、ヤリィ!」
ハルシンが声を上げる。柳さんも勿論、大喜び。
「やったな!お前ならいつかそんな日が来ると俺は信じてたぞ!当然行くんだよな⁈ な⁈ 」
念を押すように聞く。困りながらも頷く坂本さん。
それを見て、ちくっと胸が痛くなった…。
「よ…良かったですね!ついでに向こうの職人さんの仕事も見て来れますよ!」
同じレベルではしゃがなくてはいけない気がした。私の言葉に反応して、柳さんまでが付け加える。
「そーだよ!折角行くんだから、本場の楽器職人の仕事ぶり見て来いよ!」
肩をバシバシ叩く。その手を払い除けるようにして、坂本さんが答えた。
「見るだけじゃなく、修行させてくれるって。ドイツの工房で」
「なっ…!」
冗談で言ったことがホントになったから、私達は一瞬、驚いた。
「期限は無期限で、自分が納得するまで居ていいって。先生の友人が工房にいて、頼んでくれたらしいんだ。丁度いい機会だからって…」
嬉しいことなのに、少し戸惑っているみたいな表情。
急に道が開けたことを、多分坂本さん自身が一番受け入れられてない。
でも周りは……
「スゲぇ!それって、スゲぇ事ッスよね!」
「ドイツで無期限の修行なんて…!」
「もっさん!夢に近づいたじゃねーか!」
男性達が歓声を上げる。徐々に実感が湧いて来たのか、坂本さんにも少し笑顔が戻った。
「スゴイですね…ドイツでお仕事なんて…」
同じテンションで盛り上がらないといけないのは分かっているんだけど…。
(あれ…?この気落ちした声、何?…これじゃ全然喜んでないみたい…)
「頑張ってきて下さい!応援してます!」
気持ちを奮い立たせて、声と顔を上げた。
皆が振り向く。驚いてる顔に、にっこり笑いながら言った。
「ドイツ行ったら、ソーセージ送って欲しいなぁ…あっ、それからビールも美味しいんですよね!」
全然関係ない話だけど、そんなことでも言わないと泣き出しそうになる。
夏芽とハルシンが顔を見合わせる。そして同じように話し始めた。
「オレ、ドイツの地ビール飲みてーなぁ」
「ホットワインとかもあるんじゃなかった⁈ 」
「何でもいいけど憧れるなぁ…外国生活か…」
四人でいろんな事を喋る。呆れ顔をする坂本さん。今や話は客演のことでも工房で修行することでもなくなった。
いつの間にか話が済んでこっちに戻って来るみたい。
柳さんの声に合わせて振り向くと、妙に真面目な顔をした坂本さんと目が合った。
ドキッ…。胸が震える…。
「先生が紹介してれた外人誰だ?」
近くまで来て聞き直す。きっと私が気にしてたから…。
「県の広報担当者で、ドイツの人らしい」
聞かれたこと以外答えない。もどかしい感じ。
「そのドイツ人がお前にどんな話?」
聞きたがりの柳さん。もはや自分の為に聞いている。
「今度、ドイツの楽団に客演として来ないかって。知り合いが楽団の局長を務めていて、トップトランペッターを紹介してくれって言われたって…」
別に自分はトップな訳じゃないけど…って、十分トップレベルの人が言う。
「すごい!」
「もっさん、ヤリィ!」
ハルシンが声を上げる。柳さんも勿論、大喜び。
「やったな!お前ならいつかそんな日が来ると俺は信じてたぞ!当然行くんだよな⁈ な⁈ 」
念を押すように聞く。困りながらも頷く坂本さん。
それを見て、ちくっと胸が痛くなった…。
「よ…良かったですね!ついでに向こうの職人さんの仕事も見て来れますよ!」
同じレベルではしゃがなくてはいけない気がした。私の言葉に反応して、柳さんまでが付け加える。
「そーだよ!折角行くんだから、本場の楽器職人の仕事ぶり見て来いよ!」
肩をバシバシ叩く。その手を払い除けるようにして、坂本さんが答えた。
「見るだけじゃなく、修行させてくれるって。ドイツの工房で」
「なっ…!」
冗談で言ったことがホントになったから、私達は一瞬、驚いた。
「期限は無期限で、自分が納得するまで居ていいって。先生の友人が工房にいて、頼んでくれたらしいんだ。丁度いい機会だからって…」
嬉しいことなのに、少し戸惑っているみたいな表情。
急に道が開けたことを、多分坂本さん自身が一番受け入れられてない。
でも周りは……
「スゲぇ!それって、スゲぇ事ッスよね!」
「ドイツで無期限の修行なんて…!」
「もっさん!夢に近づいたじゃねーか!」
男性達が歓声を上げる。徐々に実感が湧いて来たのか、坂本さんにも少し笑顔が戻った。
「スゴイですね…ドイツでお仕事なんて…」
同じテンションで盛り上がらないといけないのは分かっているんだけど…。
(あれ…?この気落ちした声、何?…これじゃ全然喜んでないみたい…)
「頑張ってきて下さい!応援してます!」
気持ちを奮い立たせて、声と顔を上げた。
皆が振り向く。驚いてる顔に、にっこり笑いながら言った。
「ドイツ行ったら、ソーセージ送って欲しいなぁ…あっ、それからビールも美味しいんですよね!」
全然関係ない話だけど、そんなことでも言わないと泣き出しそうになる。
夏芽とハルシンが顔を見合わせる。そして同じように話し始めた。
「オレ、ドイツの地ビール飲みてーなぁ」
「ホットワインとかもあるんじゃなかった⁈ 」
「何でもいいけど憧れるなぁ…外国生活か…」
四人でいろんな事を喋る。呆れ顔をする坂本さん。今や話は客演のことでも工房で修行することでもなくなった。