音の生まれる場所
高校は私と朔以外、皆、バラバラだった。

「高校行ってもブラス続けよう!そしたらコンクールで会えるから」

中学の卒業式、五人で誓い合った。

シンヤは高専、夏芽は女子高、ハルは商業で、私と朔は県立の普通科。
中学の時と同じように吹部に入って、仲間としてやってた。

高二の夏…

「付き合おうぜ」

言い出したのは朔。
私が中学時代の先輩から、交際を迫られてたのを知ってたから。

「シロー先輩に真由を取られたくない」

子供のような理由。でも、本気で言ってくれた。

朔のことは中学の頃からずっと気になってた。
でも、五人の関係を壊したくなくてずっと黙ってた。

誰にも言わず、始まった交際。
けれど、すぐにバレてしまった…。
夏のコンクールが終わったすぐ後に、朔が緊急入院してしまったから。


「らしくねーな朔、骨折るなんてよ」

お見舞いの一番乗りはハル。
口は悪いけど、いつも最初に気を遣う。

「お前、反射神経鈍くなったんじゃねーか?」

けなしながらも心配してる。だから朔も怒らない。

「そうかもな…」

形無しのように笑ってる。そんな二人を見るのは好きだった。

「朔っ!大丈夫⁉︎ 骨折ったんだって⁉︎ 」

ドアをノックもせずに入ってきたのは夏芽。

「来た来た。やかましーのが!」

ハルの言い方に笑う。これからが二人のいつものパターン。

「やかましくて悪かったわね!あんたこそ朔の心配もせずに、ケチョンケチョンにけなしてたんじゃないの⁈ 」

大当たりなセリフに吹き出しそうになる。

「けなしてなんかいねーよ。事実を言ってただけ」
「どうだか!口の悪いハルのことだから信用できないね!」
「誰もナツに信用してもらおーとか思ってねーし!」

病人の前で小さな小競り合い。
この二人はいつもこんな調子だった。

トン、トン。

落ち着いたノックの音。そしてゆっくりドアが開く。

「朔〜、具合どうだー?…」

四人の視線、一斉に浴びたシンヤが固まる。

「なんだ…もう皆来てたのか…」

こんな時、いつもラストにやって来る。
シンヤはそういう人だった。
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