追憶のエデン
――クスクスッ


「ざぁーんねん。フラれちゃったね?アダム。」


「適当な事を言うな!まだ決まったわけじゃない!」


動揺を隠しきれず、渉は声を荒らげ、ルキフェルを鬼の様な形相で睨み付けた。


「あーもう、煩いなぁ。しつこい男は嫌われるよ?
それに――


あんまり調子に乗るなよ。この下等種族風情が。」


さっきまでクスクスと笑っていた筈のルキフェルの声のトーンが下がる。今まで見てきた人当たりの良さそうな彼とは全く違う、侮蔑と冷酷さを宿した視線と雰囲気に、感じた事のない恐怖心を抱いた。



「さっきから黙って聞いてりゃ、ギャーギャーと煩ぇったらありゃしねぇ。
お前らなんざ、俺からしてみりゃどちらもそれ程大差ねぇよ。鬱陶しい。
お前らこそさっさとイヴを諦めて、俺の前から消えろ。殺されたくなかったらな。」


怠そうに肘を付き傍観者として眺めていた、ヤハウェが沈黙を破る。そして、だらりと降ろしていた片方の手を前に突き出すと、辺りは目を開けてられない程の光が広がった。


しかし、


「さぁ、僕と一緒に帰ろ?僕と君のエデンに。」


眩しさを感じず目を開けると、真っ黒で大きな天使の翼を広げ、光からあたしを包み隠す様にしたルキフェルが妖艷に微笑んでいた。


「ちょっ…まっ…!!」


「だーめっ。そんなお願いは聞かないよ。」


そんなルキフェルの楽しそうな声が聞こえたと思う。


何故、疑問形なのかって?


だって、あたしの意識は


深く


深く


闇に堕ちていったんだもの。




「チッ!ルキフェル……!!」




また動き出した神話の続きの物語。

ただし、どんな結末が待っているのかは、神すらもわからない。



――ねぇ、これから訪れる僕達の永い、永い時間はどんな風に紡いでいくんだろうね。未羽…
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